2013年07月11日

ふたつの即興詩人−アンデルセンと森 鴎外

アンデルセン 即興詩人(上) (岩波文庫)
アンデルセン
岩波書店
売り上げランキング: 389,096

"即興詩人"は,アンデルセンのあこがれの国イタリアを舞台にしてくりひろげられる恋の物語。ローマに生まれた薄幸の主人公アントニオの生い立ちに始まり,オペラ女優アヌンチャタとの悲恋,数奇な運命の果てに,かれは即興詩人として名声を得,ヴェネツィア第一の美女マリアと結ばれてめでたく終わる。その間に,親友の豪放な貴族ベルナアルド,美貌の小尼公フラミニア姫,情熱の人妻サンタ等の美男美女,あるいはまた聖母のごとき慈愛の老婆ドメニカ,ふしぎな魔女のようなフルヴィア等を配しつつ,舞台はローマ,ナポリ,ヴェネツィアにわたる。若い芸術家の青春,かれの悲哀と世に出るまでの物語が,ローマ,ナポリ,ヴェネツィアを舞台に展開する間に,イタリア本土の名勝,旧跡,観光地のほとんど,それを取り巻く自然のたたずまいがさまざまに点綴されて描かれる。また,そこにからむギリシャ,ローマの神話,伝説からイタリアの歴史,宗教,文学,芸術,年中行事,風俗,風物にこまごまと筆が向けられるのである。イタリアのすべてにアンデルセンは心を奪われて筆を惜しまないし,至るところであるいは感激し,あるいは詠嘆して賛美の声を放つのである。(解説)

生涯を旅に暮らしたアンデルセンは,ことにイタリアにあこがれ,前後4回彼の地を訪れていますが,そのうち1833年,最初のイタリア旅行の印象や体験から生まれたのがこの"即興詩人"です。1835年にデンマークで刊行され,同じ年に刊行された"童話集"に先立ち,アンデルセンの出世作となりました。文壇の派閥争いに巻き込まれたこともあり,批評家たちからは冷たい扱いを受けましたが,一般の評判はよく,次々と版を重ね,各国語に訳され,次第に世界中の人々の愛読書となっていきました。しかしながら"即興詩人"は,"童話集"の名声に隠れ,いまでは故国デンマークでもほとんど顧みられない作品となっています。それは,この物語がロマンティックではあるものの,単純で,話がうまく出来過ぎており,登場人物の性格が一面的である,など所詮通俗小説の枠を出ないものであったからと考えられています。

そんな中,唯一日本でのみ,"即興詩人"はアンデルセンの代表作の一つとして,広く名が知られ,読みつがれてきました。本書を愛し,明治25年から足かけ10年にわたり苦心の翻訳を続けた森 鴎外がいたからです。鴎外は本書をドイツ語訳で読み,「我座右を離れざる書の一に属す」と語り,明治25年11月"しがらみ草紙"に連載を開始。あいだに日清戦争をはさみ,34年に完成。35年9月に森林太郎訳の書名で出版されました。鴎外の文章は,自身が「しちくどいまでに凝った文章」と語る通り,優雅華麗な擬古文で書かれているので,今の若い人にとって,ルビなしで読みこなすのはなかなか骨ですが,幸い岩波文庫版はほとんど全文ルビがふられているので,安心して朗読することもできます。鴎外訳を通して"即興詩人"に魅せられた人も多く,安野光雅氏は,「新興宗教の勧誘者のように」この本の信者を増やす傍ら,舞台となったイタリア各地を踏査したといいます。

ところで,岩波文庫には,大畑による原典訳と鴎外訳のふたつの"即興詩人"が収められています。大畑訳は赤帯(外国文学)でアンデルセンの著者番号を与えられていますが,鴎外訳の"即興詩人"は特別扱いで,鴎外の小説などとならんで緑帯(日本文学)扱いになっています。これは鴎外の訳が単なる"翻訳"をこえて,翻案,もしくは鴎外の半ば創作といえるほど,自由自在になされているからです。

一例として,最終章,"青の洞窟"の一部を大畑原典訳と鴎外訳で比較してみます。
洞窟の小さい入り口は明るい星のように光っていました。それが一瞬暗くなったかと思うと,二三のボートが海の底からのように浮かんできました。やがて,ボートはわたくしたちの方へやってきました。だれもが祈りの気持ちで,物思いにふけっていました。ここではプロテスタントもカトリック教徒も,奇跡の存在を感じました。「潮がさしてくるぞ!」と,こぎ手のひとりが言いました。「出なけりゃなりません。さもないと,入口がふさがって,潮が引くまで閉じこめられてしまいますから。」わたくしたちは,ふしぎなひかりにかがやく洞窟を出ました。ひろびろとした大うなばらがわたくしたちの前にひらけました。青の洞窟の暗い入口をうしろにひかえて。(大畑訳)

巌穴(いはあな)の一点の光明(くわうみやう)は忽(たちま)ち失(う)せて,第二の舟は窟内(くつない)に入り来りぬ。そのさま水底より浮び出(い)づるが如くなりき。第三,第四の舟は相継(あひつ)いで至りぬ。凡(おほよ)そここに集(つど)へる人々は,その奉ずる所の教の新旧を問はず,一人として此(この)自然の奇観に逢ひて,天にいます神父(しんぷ)の功徳(くどく)を讃(たた)へざるものなし。舟人俄(にはか)に潮満ち来(く)と叫びて,忙(せ)はしく櫓を揺(うご)かし始めつ。そは満潮の巌穴(いはあな)を塞(ふさ)ぐを恐れてなりき。遊人(いうじん)の舟は相(あひ)ふくみて洞窟(どうくつ)より出(い)で,我等は前に渺茫(べうぼう)たる大海を望み,後(しりへ)に浪汗洞(らうかんどう)の石門の漸(やうや)く細(ほそ)りゆくを見たり。(鴎外訳 代字あり)

先に鴎外訳に親しんでいたせいか,原典訳(巻末の書き込みによると私は20年前に読んだようです)はまったく別の作品のような感じを受け,申し訳ないことながら,ずっと鴎外訳を読むための"資料"のような気持ちでいました。しかし今回,久しぶりに書架から出した原典訳は,アンデルセンの童話と変わらぬ,やさしく穏やかな大畑氏の語り口が心地よく,楽しく読み進むことができました。
森鴎外全集〈10〉即興詩人 (ちくま文庫)
森 鴎外
筑摩書房
売り上げランキング: 107,307

また,鴎外の「即興詩人」がどのようなものであるのか知りたい,という方には,ちくま文庫版をおすすめします。表記は原文のまま,かつ詳細な注記がついていて,なかなか便利な本です。ただし,あの1ページごとの注記(とくに言葉の説明)というのは,鴎外の流麗な文章を味わうときに,かなり邪魔であるな,と思いますが....。以前の旺文社文庫などでもよく見かけましたが,字面で容易に想像がつくような言葉まで「・・・のさま」などといちいち説明されると,なにか教科書を読んでいるようで,ちょっと気分が乗りませんね。
sokkyou1 sokkyou2
追記----同じ本が2種類の訳で出ているわけですから,混乱もあって,鴎外訳に掛けられた緑帯に大畑訳の赤帯用の紹介文が印刷されてしまったこともありました。文章に異同があることからみて,単純な印刷ミスではなさそうですが....^^;;。(写真は大畑訳と鴎外訳の表紙と帯。鴎外の帯の紹介文が誤っている)

※本項は1997年10月29日掲載分を改訂したもの
posted by 南野靖一郎 at 10:00| 1997年

ふたつの即興詩人−アンデルセンと森 鴎外

アンデルセン 即興詩人(上) (岩波文庫)
アンデルセン
岩波書店
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"即興詩人"は,アンデルセンのあこがれの国イタリアを舞台にしてくりひろげられる恋の物語。ローマに生まれた薄幸の主人公アントニオの生い立ちに始まり,オペラ女優アヌンチャタとの悲恋,数奇な運命の果てに,かれは即興詩人として名声を得,ヴェネツィア第一の美女マリアと結ばれてめでたく終わる。その間に,親友の豪放な貴族ベルナアルド,美貌の小尼公フラミニア姫,情熱の人妻サンタ等の美男美女,あるいはまた聖母のごとき慈愛の老婆ドメニカ,ふしぎな魔女のようなフルヴィア等を配しつつ,舞台はローマ,ナポリ,ヴェネツィアにわたる。若い芸術家の青春,かれの悲哀と世に出るまでの物語が,ローマ,ナポリ,ヴェネツィアを舞台に展開する間に,イタリア本土の名勝,旧跡,観光地のほとんど,それを取り巻く自然のたたずまいがさまざまに点綴されて描かれる。また,そこにからむギリシャ,ローマの神話,伝説からイタリアの歴史,宗教,文学,芸術,年中行事,風俗,風物にこまごまと筆が向けられるのである。イタリアのすべてにアンデルセンは心を奪われて筆を惜しまないし,至るところであるいは感激し,あるいは詠嘆して賛美の声を放つのである。(解説)

生涯を旅に暮らしたアンデルセンは,ことにイタリアにあこがれ,前後4回彼の地を訪れていますが,そのうち1833年,最初のイタリア旅行の印象や体験から生まれたのがこの"即興詩人"です。1835年にデンマークで刊行され,同じ年に刊行された"童話集"に先立ち,アンデルセンの出世作となりました。文壇の派閥争いに巻き込まれたこともあり,批評家たちからは冷たい扱いを受けましたが,一般の評判はよく,次々と版を重ね,各国語に訳され,次第に世界中の人々の愛読書となっていきました。しかしながら"即興詩人"は,"童話集"の名声に隠れ,いまでは故国デンマークでもほとんど顧みられない作品となっています。それは,この物語がロマンティックではあるものの,単純で,話がうまく出来過ぎており,登場人物の性格が一面的である,など所詮通俗小説の枠を出ないものであったからと考えられています。

そんな中,唯一日本でのみ,"即興詩人"はアンデルセンの代表作の一つとして,広く名が知られ,読みつがれてきました。本書を愛し,明治25年から足かけ10年にわたり苦心の翻訳を続けた森 鴎外がいたからです。鴎外は本書をドイツ語訳で読み,「我座右を離れざる書の一に属す」と語り,明治25年11月"しがらみ草紙"に連載を開始。あいだに日清戦争をはさみ,34年に完成。35年9月に森林太郎訳の書名で出版されました。鴎外の文章は,自身が「しちくどいまでに凝った文章」と語る通り,優雅華麗な擬古文で書かれているので,今の若い人にとって,ルビなしで読みこなすのはなかなか骨ですが,幸い岩波文庫版はほとんど全文ルビがふられているので,安心して朗読することもできます。鴎外訳を通して"即興詩人"に魅せられた人も多く,安野光雅氏は,「新興宗教の勧誘者のように」この本の信者を増やす傍ら,舞台となったイタリア各地を踏査したといいます。

ところで,岩波文庫には,大畑による原典訳と鴎外訳のふたつの"即興詩人"が収められています。大畑訳は赤帯(外国文学)でアンデルセンの著者番号を与えられていますが,鴎外訳の"即興詩人"は特別扱いで,鴎外の小説などとならんで緑帯(日本文学)扱いになっています。これは鴎外の訳が単なる"翻訳"をこえて,翻案,もしくは鴎外の半ば創作といえるほど,自由自在になされているからです。

一例として,最終章,"青の洞窟"の一部を大畑原典訳と鴎外訳で比較してみます。
洞窟の小さい入り口は明るい星のように光っていました。それが一瞬暗くなったかと思うと,二三のボートが海の底からのように浮かんできました。やがて,ボートはわたくしたちの方へやってきました。だれもが祈りの気持ちで,物思いにふけっていました。ここではプロテスタントもカトリック教徒も,奇跡の存在を感じました。「潮がさしてくるぞ!」と,こぎ手のひとりが言いました。「出なけりゃなりません。さもないと,入口がふさがって,潮が引くまで閉じこめられてしまいますから。」わたくしたちは,ふしぎなひかりにかがやく洞窟を出ました。ひろびろとした大うなばらがわたくしたちの前にひらけました。青の洞窟の暗い入口をうしろにひかえて。(大畑訳)

巌穴(いはあな)の一点の光明(くわうみやう)は忽(たちま)ち失(う)せて,第二の舟は窟内(くつない)に入り来りぬ。そのさま水底より浮び出(い)づるが如くなりき。第三,第四の舟は相継(あひつ)いで至りぬ。凡(おほよ)そここに集(つど)へる人々は,その奉ずる所の教の新旧を問はず,一人として此(この)自然の奇観に逢ひて,天にいます神父(しんぷ)の功徳(くどく)を讃(たた)へざるものなし。舟人俄(にはか)に潮満ち来(く)と叫びて,忙(せ)はしく櫓を揺(うご)かし始めつ。そは満潮の巌穴(いはあな)を塞(ふさ)ぐを恐れてなりき。遊人(いうじん)の舟は相(あひ)ふくみて洞窟(どうくつ)より出(い)で,我等は前に渺茫(べうぼう)たる大海を望み,後(しりへ)に浪汗洞(らうかんどう)の石門の漸(やうや)く細(ほそ)りゆくを見たり。(鴎外訳 代字あり)

先に鴎外訳に親しんでいたせいか,原典訳(巻末の書き込みによると私は20年前に読んだようです)はまったく別の作品のような感じを受け,申し訳ないことながら,ずっと鴎外訳を読むための"資料"のような気持ちでいました。しかし今回,久しぶりに書架から出した原典訳は,アンデルセンの童話と変わらぬ,やさしく穏やかな大畑氏の語り口が心地よく,楽しく読み進むことができました。
森鴎外全集〈10〉即興詩人 (ちくま文庫)
森 鴎外
筑摩書房
売り上げランキング: 107,307

また,鴎外の「即興詩人」がどのようなものであるのか知りたい,という方には,ちくま文庫版をおすすめします。表記は原文のまま,かつ詳細な注記がついていて,なかなか便利な本です。ただし,あの1ページごとの注記(とくに言葉の説明)というのは,鴎外の流麗な文章を味わうときに,かなり邪魔であるな,と思いますが....。以前の旺文社文庫などでもよく見かけましたが,字面で容易に想像がつくような言葉まで「・・・のさま」などといちいち説明されると,なにか教科書を読んでいるようで,ちょっと気分が乗りませんね。
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追記----同じ本が2種類の訳で出ているわけですから,混乱もあって,鴎外訳に掛けられた緑帯に大畑訳の赤帯用の紹介文が印刷されてしまったこともありました。文章に異同があることからみて,単純な印刷ミスではなさそうですが....^^;;。(写真は大畑訳と鴎外訳の表紙と帯。鴎外の帯の紹介文が誤っている)

※本項は1997年10月29日掲載分を改訂したもの
posted by 南野靖一郎 at 10:00| 1997年

1997年12月20日

1997年の締めくくり

今年最後の締めくくりは,読みやすい^^4点。

★荒野の呼び声(ジャック・ロンドン)
海保眞夫による43年ぶりの新訳。旧訳者は岩田欣三。19世紀末,富裕な家でセントバーナードとコリーの間に生まれ育ったバックが,盗みだされ,ゴールドラッシュに沸くカナダでそり犬として働くことに。過酷な労働と,生死をかけた闘いの中で鍛えられ,バックは次第に野性に目ざめていく。

★夢の女・恐怖のベッド(ウィルキー・コリンズ)
推理小説の創始者の一人,コリンズの短篇集。詳しくはここ

★ある出稼石工の回想(マルタン・ナド)
コリンズ短篇集の「黒い家」は,石工の家の幼い少女が一人で,荒くれ男たちから命を懸けて家を守る冒険物語だが,これは19世紀パリの出稼ぎ労働者の回想録。著者ナドは,のちに石工仲間に推されてフランス立法議会議員となり,急進的な共和主義者として知られている。単なる立身出世物語ではなく,激動のフランス革命時代を一移民労働者の立場から詳細に記述した貴重な記録。

★俳談(高浜虚子)
虚子の俳論や日常のさまざまな雑事を綴った1ページそこそこの短文を150余りを集めた文集。「写生」について分かり易く説く。
posted by 南野靖一郎 at 16:55| 1997年

1997年12月14日

モロー博士の島

モロー博士の島―他九篇 (岩波文庫)
H.G.ウェルズが岩波文庫にある,というと奇異な感じがしませんか。しかし,岩波文庫にウェルズが入ったのはずいぶん昔のことで,昭和28年「トーノ・バンゲイ」が最初です。その後,しばらく音沙汰がなかったのですが,ここ数年,ようやく代表作のいくつかがそろってきました。

モロー博士の島,またの名を改造人間の島,を久しぶりに読み直し,やはりウェルズは面白い,と思いました。改造人間というと,普通は人間自体を改造し(フランケンのような)怪物を造り出すのですが,生物学者ドクターモローは,孤島で猿や牛を人間に改造するという異様な研究に打ち込みます。改造人間たちには掟を教え込み,自らを神とし,従順な社会を作り上げていた博士の身に起こったことは....。

そのほかにも,未来の新聞が突然配達されてきた男の困惑(ウェルズが1970年代をどのように予測していたかがわかる)や,肥満に悩む男がインドの秘法を試したところ思いがけない結果が....(肥満解消ではなくて重さをなくす秘法だったからですが),などなど本邦初訳も含めて楽しく気持ちの悪い話ばかりです。

☆トーノ・バンゲイ☆
SFの父,ウェルズの代表的長篇。一人の若者が「トーノ・バンゲイ」なるインチキ強精剤を発明。儲けに儲けて巨万の富を築くが,やがてそのインチキ性が暴露され,破滅と転落の道をたどる,という物語。社会派ウェルズの資本主義社会告発小説だが,随所にSF的発想,科学ペダントリィが見られる。

岩波文庫で読むウェルズ

  • モロー博士の島 他9篇 (1993)

  • タイム・マシン 他9篇 (1991)

  • 透明人間 (1992)

  • 解放された世界 (1997)

  • トーノ・バンゲイ (1953 絶版)



岩波新書で読むウェルズ

  • 世界史概観 全2冊 (1966)

posted by 南野靖一郎 at 16:17| 1997年

1997年12月11日

忘られぬ言葉(ハイゼ)

忘られぬ言葉 (岩波文庫 赤 465-1)
パウル・ハイゼ
岩波書店
売り上げランキング: 1003659

ドイツ文学には昔から教養小説というカテゴリーがあるといわれています。我が国では最近,大学の教養課程なるものも縮小の一途で,若い世代にとって"教養"は死語同然となっており,教養書と呼ばれるのはもっぱらビジネスマン向けHow toものなど,"お勉強"関係の本ばかりで面白くありませんね。その点,ドイツの教養小説では,教養を身に付けるのは読者ではなく,もっぱら主人公ですから,勉強を強いられることなく,安心して読むことができます....^^。

岩波文庫には,初期のゲーテやヘッセ,ケラー,シュトルム,ヘルダーリンなど,教養小説に属するものが,かつてはたくさん収められていました。なかでもイタリアを愛したハイゼの諸作は,エキゾチック舞台設定や登場人物が好まれて,古くから我が国でも愛読されてきました。

ハイゼの短篇"忘られぬ言葉"は,イタリアとドイツの森を舞台にした男爵令嬢と若きドイツ人家庭教師との恋物語。旅先のイタリアで出会った二人は,互いに惹かれるものを感じ,令嬢のお屋敷で弟の家庭教師として一緒に暮らすことになります。初めは広大な屋敷や貴族的な生活に,やや気後れ気味だった彼でしたが,屋敷の人々から愛され,二人の愛情が深まるとともに,彼の文学への情熱も高まってきます。もともと,身分の違いなど意に介さぬ二人でしたが,そんな楽しい日々の中で,あるとき彼が,令嬢とその友人の女性との会話を,ふと立ち聞きしてしまったことから大きな衝撃を受け,ひとり屋敷を去り,旅立つことに。

数年後,令嬢宛に,イタリアに旅した友人からの手紙が届き,彼がイタリアに客死し,その墓銘碑に"余は忘るる能はず"と書かれていたことを伝えます。令嬢はその後,結婚もせず老いた母を看取ってすぐ,自分も亡くなりますが,その墓に"余は忘るる能はず"の言葉を刻むようにとの遺言が残されていました。

さて,二人の間には何があり,"忘られぬ言葉"というのは何のことなのでしょうか。それは本書を読んでのお楽しみ....。まあ,同じ男として,愛する女性を許せなかった彼を,度量のない男とは責められない気持ちです^^;;。

ハイゼは,著名な言語学者であった父と,裕福な母の間に生まれ,幼い頃より恵まれた生活を送りました。それは穏やかな作風にも現れているようです。19世紀末には,自然主義者たちにより激しい攻撃を受けましたが,今世紀に入ってからは再評価され,1910年,ドイツで初めてノーベル文学賞を受賞しました。

本書は昭和5年に岩波文庫に収められました。ドストエフスキーやスタンダールのような強烈なストーリー展開があるわけでも,さりとてリアリズムでもない地味な教養小説が,近年,次第に読まれなくなっていくのは仕方がないことかもしれませんが,本書もその後は再版されず,2年ほど前に一度復刊されたきりです。岩波文庫には,やはりイタリアを舞台にした「片意地娘」(短篇集)があり,ハイゼの代表作であるこちらもお薦めです。
posted by 南野靖一郎 at 16:19| 1997年

1997年12月06日

ドストエフスキー"妻への手紙"

妻への手紙 (上巻) (岩波文庫)
ドストエフスキー
岩波書店
売り上げランキング: 525511

ドストエフスキーの「賭博者」は,ギャンブルにはまっていく人間の心理を克明に描いたもので,まさにドストエフスキーならではの作品だ。そう,ドストエフスキーはギャンブル狂だったのである。本書「妻への手紙」には,一文無しになり質草がなくなっても一発逆転を夢見てルーレット台から離れることのできない情けない自分を嘆く文面が随所に出てくる。そして手紙の最後は決まって,"愛する妻よ,どうぞ送金を急いでおくれ"....。もっとも「手紙」の相手たる二人目の妻アンナと知り合ったのも,この「賭博者」という作品が縁であった。

当時,出版社からの前借りで首が回らなくなっていたドストエフスキーは,借金返済のため大急ぎで作品を渡さねばならなかった。しかし,とうてい執筆している時間がないので,一計を案じ,かねて腹案のあった(実体験そのままですな^^;;)この「賭博者」を口述筆記でやっつけてしまうことにした。そのとき,速記者として紹介され,やってきたのが,若いアンナだったのだ。ちょうど,愛する兄や妻に先立たれて寂しい生活を送っていたドストエフスキーは,このアンナに惹かれ,1ヶ月でプロポーズ。アンナもまた,高名な敬愛すべき作家に見初められたことは満更でもなく,4ヶ月目には結婚と相成った。

しかし再婚となると,自分たちの生活が脅かされる先妻の子供や親戚が黙っていない。借金苦も相変わらずだ。そこで夫妻は,新婚生活もそこそこに,周囲のゴタゴタから逃れるべく,ドイツ,スイス,イタリアなど西欧各地に,足かけ4年にわたる旅に出た。(この間も,ルーレットで散々痛い目にあっている)

帰国後は,家族を生活費を削減するため地方へ転地させ,自分はペテルブルクに残り,毎日のようにアンナへ手紙を書き続けた。この手紙は作家の死後,夫人により整理,分類され,詳しい註もつけられていたが,公にされたのは,夫人の死後,ドストエフスキー家所蔵文書中より発見されてから以降である。

「妻への手紙」には,結婚前から晩年に至るまで,妻アンナに送った手紙162通が収められている。作家の"手紙"や"日記" には,あらかじめ作品として公にされることを意図して書かれているものもあるが,この「手紙」はまったくプライベートなもので,ドストエフスキーの生活を知る上で貴重な資料だ。

そこで,その内容だが,これはもう第一に金の話。それも賭博の反省と借金の心配。これに持病の話を加えれば,これがほとんどである。作家の精神世界を盗み見て,作品解釈の手だてにしようという人々は,いきなりコケざるを得ない。実際,岩波文庫版700ページにも及ぶ手紙が,あまりにうんざりするものばかりなので,最後まで読み通すのには,非常な根気が必要だ。ざっと拾い読みして,ああ,ドストエフスキーも日常の些事に煩わされることでは,我々と一緒だったのだ,と安心し,その作品に一層の親しみを感じるのなら,それでも充分か。

しかし注意しなければならない! 本書の中でいちばん重要な手紙はいちばん最後,すなわち1880年6月にモスクワで行われたプーシキン記念祭での自らの演説の様子を伝える13通だからだ。これはロシア文壇にとって歴史的事件であった。このとき,当時の文壇を二分していた西欧主義者ツルゲーネフと,スラブ主義者ドストエフスキーが,国民詩人プーシキン記念像の除幕式に当たって,ともに演説を行い,ドストエフスキーが聴衆より熱狂的な支持を得たのだ。手紙は,"頭が変になり,手足が震えるような"ドストエフスキーの極度の興奮ぶりを伝えている。たしかにドストエフスキーにとって,生涯最後の大事件となったここのところは,ぜひ読んでおきたい。(復刊されて間がないので,新刊書店で入手可能)
posted by 南野靖一郎 at 16:18| 1997年

旧掲示板2

文庫本大好き−掲示板No.2




森宏太郎 -
97/12/06 00:16:01

ホームページアドレス:http://www.alles.or.jp/~moriko/index.html

電子メールアドレス:moriko@alles.or.jp

おすすめの本: ラ・ロシュフコー箴言集


コメント:

はじめまして。 岩波文庫を中心としているところが何とも渋いですね。 僕が最近読んでいるのは『ラ・ロシュフコー箴言集』ですが、
もっぱら読むのはトイレで座っているときで(笑)、普段は普通の論説が中心です。 そんなわけで僕のページもその手の書評が中心ですが、
ここみたいにターゲットを絞って作ろうかな、などと思ったりもしました。 ともあれ、また来ます。 それじゃ






REX - 97/12/02
23:22:55

電子メールアドレス:rex@vip.club.or.jp


コメント:

情報の提供ありがとうございます。 八王子中心に「いとう」という大型古書店チェーンがあり、ペリー・
ローダンはほとんどそこでそろえたのですが・・・・・。 バロウズの”ペルシダー”シリーズとかスミスの”スカイラーク”
シリーズとかなどはさすがに見あたりません。 やはりプレミア付きで1冊2000円ほどを覚悟しなくてはならないのでしょうか? 東京・
埼玉でこういった関係の本に強い古書店をご存じの方、引き続き情報をお待ちしております。 あと、赤瀬川原平の「櫻画報大全」も。






黒い樽 -
97/12/02 14:57:34

電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp


コメント:

こんにちは。REXさんへの情報です。このHPからもリンクしている「ふるほん文庫やさん」にはだいたいの文庫なそろっていると思われます。
  ただし、スミスはともかくバロウズはこういった専門店になるとちょっとプレミアがつくようになっています。そこで周辺の古本屋
(とくにこういう本は郊外の大型店に割とあるように思う)で探してからこういった専門店にあたった方が良いと思います。  以上、
あまり参考にならないかと思いますが報告させていただきます。 






富田 靖 -
97/12/02 05:18:43

ホームページアドレス:http://www.fuji-mt.or.jp/~hirosige/

電子メールアドレス:y-tomita@saturn.netspace.or.jp


コメント:

REXさん,こんにちは。創元推理文庫には疎いのですが,通信販売もしている「あべの古書店」にバロウズがあるようです。
価格は1000〜1500円。神田の古書店ではポケミスの専門店はありますが,文庫の方はまとまった店は???です。
(文庫川村には比較的あるかも)






REX -
97/11/30 01:16:57

電子メールアドレス:morik@pc.highway.ne.jp


コメント:

はじめまして。 大学で社会学を勉強しているので、岩波文庫は結構買いました。 社会保障論の講義でマルサスの「人口論」を指定され、
古本屋を探し回ったのもよい思い出です。 最近は古い海外SFにこっていて、E・E・スミスとかエドガー・バローズとかの文庫
(創元やハヤカワ)を探しているのですが、 よい古書店はないでしょうか? ペリー・ローダンは結構置いているのですが・・・・・
(文庫でも220冊購入するのには苦労しました)。 このページの趣旨とは違うようですが、ご存じの方はよろしくお願いいたします。






富田 靖 -
97/11/28 16:55:36

電子メールアドレス:y-tomita@geocities.co.jp


コメント:

先に書いたような理由でasahi-netをやめることにしたのですが,その後DMがきて,
30時間3000円の新コースができたので続けませんか?とのこと。う〜ん,25Mのホームページスペースは魅力なんですが,
3000円でもちょいと高いですね。どうも私自身は月に100時間くらい使っているようですし....。
テレホーダイの時刻など気にせず使える格安専用線の時代が早くこないかな。






富田 靖 -
97/11/25 10:56:04

電子メールアドレス:y-tomita@geocities.co.jp


コメント:

連休中は,近場の伊豆箱根に行き,お決まりの大渋滞に引っかかってきました。Geocitiesは日本語コードがEUCなので,
その辺が文字化けの原因かなと思っているのですが....。






富田 靖 -
97/11/19 23:06:59


コメント:

文庫大全を近くの本屋で発見! ははは,やっぱり厚いですな〜。でも,書目リストばかりかと思ったら,コラムもいろいろあって,
読めますね^^。稀少文庫のところは,なかなか勉強になりました。






黒い樽 -
97/11/19 16:56:28

電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp


コメント:

ニッポン文庫大全は15日に購入して毎日読んでます。 山本文庫とか全然見たことのない文庫までリストが載っているなんてやっぱり『凄い』
です。 確かに3800円はちょっと高い気もするので本屋でちょっと見てよかったら購入するというのはどうでしょうか? 
(でも一回見てしまったらどうしても買いたくなってしまうんじゃないかな、と思います。少なくとも私はそうでした) 詳しくは(株)
ダイヤモンド か ふるほん文庫やさんまで。






富田 靖 -
97/11/19 16:32:49


コメント:

冴木正隆さん。ニッポン文庫大全,ふるほん文庫やさんのページで見かけたのですが,う〜ん,ちょっと高いな,と思い,
そのままになってしまいました^^;;。角川など他文庫の絶版書目もわかるとなれば,役に立ちますね。






冴木正隆 -
97/11/19 13:55:56

おすすめの本: ニッポン文庫大全


コメント:

ずっと刊行を待っていた『ニッポン文庫大全』(ダイヤモンド社)が、今日とうとう出ました。定価3800円と決して安い本ではありませんが、
私のように絶版の文庫を求めている者にとっては、井狩春男著『文庫中毒』(ブロンズ新社)以来の衝撃的出来事です。
各文庫の絶版品切書目をリストアップした労力(特にこれまでなかった角川文庫の目録の調査結果は貴重)は、いくら賞賛しても足らないほど。
「古本文庫やさん」の企画だけに、第5章はその関係の記事で構成され、同店に注文できる絶版文庫リストまでついていますから、
現物を入手することも不可能ではないという点も画期的。コラム類の内容がいまひとつ浅いうらみはありますが、
ともかくどこか大きな書店で一度手にとって見てください。






富田 靖 -
97/11/18 17:09:09


コメント:

冴木正隆さん,矢口さんの本には興味がありますね。矢口さんは「図書新聞」の編集をしていた方で,著書「文庫そのすべて」は,
ちょっと古くなりましたが,ほとんど唯一の「文庫本史」の本です。私も愛読しました。BOOKMANは,
もともとあまり売れてなかったから^^;;,今では手に入りにくいかもしれません。






富田 靖 -
97/11/18 09:12:18


コメント:

ジオシティーズに移って1000人目のお客様となった黒い樽さん,おめでとうございます。賞品が出ないで申し訳ありません^^;;。
asahi-netにあった頃から合わせて5000人ほどになります。今後ともよろしくお願いいたします。






黒い樽 -
97/11/17 17:38:37

電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp


コメント:

ホームページのリニューアルおめでとうございます。加えて1000人突破おめでとうございます。 
(まさか自分が1000人目になるとは思いもよらなかった)  これからもご発展のほどを心よりお祈りいたします。






冴木正隆 -
97/11/17 11:57:37

電子メールアドレス:maririn@white.plala.or.jp

おすすめの本: 世界文学全集


コメント:

ホームページのリニューアルおめでとうございます。ところで、『文庫そのすべて』の作者でもある(と思うのですが)矢口進也さんの新刊
『世界文学全集』がトパーズプレスから出ました。かつて本の情報誌「BOOKMAN」で掲載されていたものの単行本化であれば、
古今の世界文学全集に関する情報をマニアックな視点から捉え直した画期的な一冊であるはず。実はまだ現物を入手してませんが、
とりあえずはお知らせまで。ちなみに雑誌「BOOKMAN」のバックナンバーは、既にないとのこと。幻の雑誌になってしまったんですね。






富田 靖 -
97/11/17 09:26:05


コメント:

文字化けについて。"文庫本大好き"の本文ページがMac+Netscape2.0で文字化けしていると海外の方から指摘がありました。
shift-JISの関係かとも思いますが,原因に心当たりのある方,実際に文字化けしているよ!という方,ご連絡をお願いいたします。






やまと おうき -
97/11/17 07:48:37

ホームページアドレス:http://www.asahi-net.or.jp/~NN2H-SGMR/index.html


コメント:

はじめまして・・やまと おうき・ともうします ぶんこぼん・わたしも・すきです わかいひとの・どくしょばなれ・・しんぱいです
かんりにんさんも・みなさんも・ よろしかったら・ わたしのサイトにもきてくださいね






富田 靖 -
97/11/15 07:28:23


コメント:

黒い樽さん。詳しい情報ありがとうございます。ハイゼときたら,つぎはシュトルムかケラーでしょうか(どちらも好きなのです^^)。
サマセット・モームはドイツ文学を評価していなくて,読書案内ではゲーテのみ。十大小説には一つも入れてませんね。






黒い樽 -
97/11/14 18:49:02

電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp


コメント:

 先日コメントを書き込ませてもらった黒い樽です。「岩波文庫の赤帯を読む」
について説明が足りず一部混乱を発生させてしまったことを深くお詫びします。上記の本は最近出たれっきとした単行本です。
以下に説明を書きますので興味のある方はそちらをどうぞ。 題名:岩波文庫の赤帯を読む 著者:門谷建蔵 出版社:青弓社 TEL:03−
3265−8548(代) ISBN:4−7872−9121−1 定価:2000円+税 内容について一言で言えば「赤帯読破マラソン」
といったところでしょうか。私は赤帯の95%以上読んでいないにもかかわらずこの本は楽しく読めました。
しかしこの本のおかげで私は赤帯中毒になってしまったのでした。皆さんも注意してください。 ちなみに今読んでいる岩波文庫はパウル・
ハイゼの『片意地娘』です(結構おすすめ)。読むスピードは遅い方だと思うので、
どうしても読みやすい短篇からになってしまいがちになることをいつも反省してます。
(でもどんどん長篇がたまっていく傾向は変わらないのであった)






ハナ -
97/11/13 18:44:43

ホームページアドレス:http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6902

電子メールアドレス:HZK00117@niftyserve.or.jp


コメント:

 なんか、僕は無茶苦茶な読書をするもので。乱読って言うんでしょうね。ところで、最近カミュの「異邦人」を読みました。
岩波じゃなくってすみませんね。しかし、ムルソー君は完全に狂ってると思いませんか?
 最近尊敬する村上春樹氏にメールを出したら二通も返事が届きました。凄く考えさせられる返事で、僕のホームページに張り付けました。
11月13日分にはいってるのでどうしようもないほど暇だったらお立ち寄りください。






NACA -
97/11/13 16:41:43


コメント:

今、話題の「赤帯」ってなんのことでしょう? 今回は、それだけです。 また来ます。






富田 靖 -
97/11/13 14:58:23


コメント:

冴木正隆さん。こんにちは。青弓社ですか。あそこは絶版文庫関係の本をいくつか出していますね。「ペルシア人の手紙」は面白そうです。
ちょっと題名からだけでは内容が想像できませんね。






冴木正隆 -
97/11/13 13:54:09

電子メールアドレス:maririn@white.plala.or.jp

おすすめの本: ペルシア人の手紙


コメント:

いつのまにか引っ越していたんですね。私のメッセージを残していただいてくれてありがとうございます。 昨日、岩波の復刊文庫入手しました。
とりあえずリラダンの『未来のイヴ』と天草版『伊曾保物語(キリシタン版のイソップ物語です)』を購いましたが、
とんでもない面白本がモンテスキューの『ペルシア人の手紙』。 当時のフランスの国情を見聞したペルシア人が手紙を書くという形式で、
痛快な風刺文学となっています。必読ものですね。 ところで、話題に出ている『岩波文庫の赤帯を読む』ですが、
青弓社という出版社から出ているちゃんとした単行本です。あれを読むと、古本屋回りに拍車がかかりますね。






富田 靖 -
97/11/13 05:18:20


コメント:

黒い樽さん,こんにちは。赤帯にハマっているとはお気の毒です^^。底なし沼かもしれませんよ(笑)。ところで,「岩波文庫の赤帯を読む」
とは? 私も持ってますか?(変な聞き方ですが^^;;)






黒い樽 -
97/11/11 19:06:11

電子メールアドレス:z931051@info.uoeh-u.ac.jp

おすすめの本: 岩波文庫の赤帯を読む


コメント:

HP拝見しました。最近になってようやく岩波のありがたさがわかってきた若造です。
しかしこの1ヶ月で赤帯だけ200冊以上買ってしまってお財布がピンチになってます。これも上記の本のせいです。いや自業自得です。
ごめんなさい。ところで岩波文庫ファンにとって上記の本の感想とやらを聞かせて欲しいのですが?






富田 靖 -
97/11/10 10:37:10

おすすめの本: ドリトル先生


コメント:

NACAさん。「王子と乞食」といえば,先の昭和天皇が記者の「もし陛下が王子と乞食のような立場であったらどうなさいましたか?」
の問いに,「子供の頃読みましたが,やはり同じような結末になったことと思います」とお答えになっていました。
岩波少年文庫にはシリーズで入っている「ドリトル先生シリーズ」はなぜ岩波文庫に入らないのか? 子供の頃から大好きな話ばかりなので,
ぜひ入れて欲しいのですね^^。






ハナ -
97/11/07 16:42:09

ホームページアドレス:http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6902

電子メールアドレス:HZK00117@niftyserve.or.jp


コメント:

 コンピューターの歴史、拝見させていただきました。うちにも、8801mk2(だったかな?)があります。






NACA -
97/11/07 16:14:16

おすすめの本: 間抜けのウイルソン


コメント:

なんと! 岩波文庫から、「イヴの日記」が出ていたんですね! 知りませんでした。わたくしも好きです。もっとも、
旺文社文庫というのを5年くらい前に古本屋で見つけて、読んだのですが・・・。トウェインの他の作品では、「間抜けのウイルソン」
というのが中公文庫からあったんですが、もうそれ絶版で入手不可能なんですよね。最近、彩流社から出したのを読みましたが、面白かったです。
「王子と乞食」と同じく、取りかえばや物語です。トウェインは、「かの異形の双生児」の序文に、
そもそも短編のつもりで書き始めたとしています。短編のつもりで書き始めたはずの双生児の滑稽譚の脇役から、思いがけなくも長編
「間抜けのウイルソン」が誕生した、と。短編の中の一部分が増殖して、ついに短編の主権を奪うまでにいたり、ついには、
短編の方を摘出してしまわなければならなくなるという事態がまずあります。
作者が作品へのコントロールを失って招いてしまった事態はさらにそれが投影したかのような不思議な暗号を呼び込む。正当な相続者が、
相続権を横領され異形の者に地位を乗っ取られてしまう不思議な暗号を。つまり、「かの異形の双生児」にむりやり取ってかわってしまった
「間抜けのウイルソン」は、他ならぬ乗っ取りのはなしを語る小説です!!! ちなみに「かの異形の双生児」と「間抜けのウイルソン」
は一冊にまとまっています。最初に「双生児」のほうから読むとおもしろさが倍増すると思います。長編ですから、忙しい人(ものぐさな人)
は本屋さんに行って、「間抜けのウイルソン」の各章についている、『間抜けのウイルソンのカレンダー』をみるだけでも価値あり!
 ついつい中身を読みたくなること、請け合い。



posted by 南野靖一郎 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 1997年

1997年11月26日

メーテルリンクの"青い鳥"

 

幸せの青い鳥を求めて,チルチルが「思いでの郷」や「夜の宮」,「歓びの城」をたずねて廻る美しい詩のような名作,夢のようなまどやかな作品。1908年作。

岩波文庫にはメーテルリンクより翻訳を許された若月紫蘭氏の訳により,1929年に収録。1939年に改訳。赤帯フランス文学としてしばらく絶版になっていましたが,先頃復刊。現在は,また絶版。写真はいまより縦長の判型だった戦前版です。

メーテルリンクについて

モーリス・メーテルリンクは1862年,ベルギーのゲントに生まれ,最初両親の希望によって法律を学び,学校卒業後,しばらく法律家として立っていたのでしたが,1886年パリに行ってから文学者の仲間入りをなし,霊的詩的神秘的方面に興味を持っていたのです。1889年,父の死にあってベルギーに帰って,詩集「セレ・ショード」と戯曲「マレーヌ王女」とを公にすると,ベルギーのシェークスピアだと評せられたのでした。

その後67年間,ベルギーにあって創作に従事していたのですが,1896年ベルギーを出てからは再び帰国せず,爾来,「知恵と運命」「貧者の寶」「埋もれた寺院」「蜜蜂の生活」等の哲学的論文を公にし,益々その名を高くしたのでした。

「青い鳥」はメーテルリンクの作品中もっとも広く知られており,今日ではほとんど世界の各国語に翻訳され,映画にまでされて,日本でも映写されたことがあります。映画ばかりでなく,日本で2回も上演されたこともあり,相当知られている作品です。

この作の面白いところは,子供が主人公である上に,見て美しくもあって,子供にもわかるように書かれているいるという点と,熟読すれば哲学的の疑問も,高遠なる論理にも充満していて,比較的でもあり象徴的でも神秘的でもあるという点にあるのです。

一体「人間はどこから来るのか」,「どこへゆくのか」,「死とはなんぞや」,「幸福とはなんぞや」,これらはこの戯曲の提供する最も大きな問題なのですが,また何人も容易に答えられない哲学的神秘的の大きな問題でもあるはずです。

これに対して,作者はいちいち明晰な回答を与えてはいませんが,「青い鳥」を象徴していると思われる「幸福」の如きに対しては,それが「無我愛」,「犠牲」そのものであることを説いているように思われ,子供にとっての最大の幸福は我が家であり,母の愛であることを教えているようです。(1939年改訳版紫蘭氏の序による)

「青い鳥」は子供の頃,絵本や童話集などで愛読し,印象の強い作品でした。今回,あらためて読み返してみて,訳者の紫蘭氏が本書をたいへん巧くまとめられていたので上記の通り,転載いたしました。岩波にはぜひ復刊を望みたいところです。
posted by 南野靖一郎 at 16:05| 1997年

1997年11月25日

美味礼讃(サヴァラン)

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)
ブリア=サバラン
岩波書店
売り上げランキング: 146960

「新しい御馳走の発見は、人類の幸福にとって天体の発見以上のものである。」- ブリア・サヴァラン -

「岩波文庫の食の本」で,肝心なサヴァランが抜けてしまった。これだけ別に一項を設けよう!という特別の思い入れがあったわけではなくあのドラマ「王様のレストラン」とのからみで何か書こうと思いつつ,ビデオを見ていて、やっぱり山口智子はいいなぁ,などといっているうちに忘れてしまったのだった。

美食家サヴァランは、いまではケーキの名として親しいが,このケーキは別にサヴァランによって考案されたわけではない。スポンジに,ラム酒とシロップを含ませ,表面にアプリコットジャムを薄くコーティングしたフランスの伝統的な菓子サヴァランは,ポーランド王レクチンスキー公付きのシェフ,シュブリオにより考案され,はじめ公によって,アリ・ババと名付けられた。その後19世紀初頭には宮廷に仕えていた職人ストレールがこれを一般に広め,さらに1840年,オーギュスト・ジュリアンが改良を加え,当時の有名な美食家にちなんで,ブリヤ・サヴァランと名付けたのだ。

本書の著者ブリア・サヴァランは,あらゆる学問芸術に通ぜざるなく,その上,詩も作曲も,時には粋な小唄の一つも歌おうという,こういう人物が学殖蘊蓄を傾けて語る“料理の芸術”と言えば,この名著の内容をほぼ御想像いただけるだろう。(解説目録)

こういう人間と一緒に食事して,楽しいかどうかはともかく,「美味礼讃」(原題・味覚の生理学, 英語ではThe Physiology of Taste)は読んで楽しくためになる本だ。その学問的な蘊蓄を語る部分で,博識ぶりを見せつけながらも,皮肉とユーモアをw忘れない。あしたの夕食づくりには向かないかもしれないが,当時の流行の料理のレシピも興味深い。彼にとって人生すべてが、食べることの楽しさに結びつけられているのだ。

本書の最後に,さまざまな食の思い出を記したヴァリエテ(雑録)がある。その亡命時代の思い出の章にアメリカの項があり、その内容は「・・・・・・」空白。

訳者は「どういうわけか原書には標題だけあって本文がない。別の場所に発表するつもりなのか,さしさわりを考えて削除したのか」といっているが ここは「言うべきことがない」っていうことなんじゃないかしら….。

まあ,美食家と呼ばれるには腹周りも懐具合も貫禄不足だが,せめてサヴァランでも食べながら「王様のレストラン」を見ることに,....いや違った「美味礼讃」を読むことにしようか。
posted by 南野靖一郎 at 15:55| 1997年

1997年11月20日

1997年11月の新刊

先月までは創刊70周年記念の新刊・復刊ラッシュで,読む方も(たぶん出す方も)なかなか忙しかったが,今月はいつものペースで4点の新刊が出た。

1 市民の反抗
19世紀アメリカの作家ソローは自然を詳細に観察し,植物や動物のスケッチを数多く日誌に残した。岩波文庫読者にはウォールデン湖畔で2年あまりを過ごした経験をもとに書いた「森の生活」(WALDEN)で馴染みがある。奴隷制に反対し投獄され,その後は執筆と講演で暮らし,45歳で亡くなったソロー。本書からは消費社会や自然破壊,個人主義と国家主義など,現代社会の問題点に早くから取り組んだ,ナチュラリストとしての彼の姿を伺うことができる。宝島社版「森の生活」には,輝かしい経歴を捨てて森に入った....云々という紹介があるが,ソローの森は満たされない教師生活や家業からの逃げ場だったと考えるのが自然ではないか....。もとより現代のうさんくさいナチュラリストと一緒にするつもりはないが。

2 アイルランド−歴史と風土
著者オフェイロンは現代アイルランドの作家。アイルランドの歴史を,神話の時代から,現代の独立運動まで,活動家としての自らの体験を交えて詳細に語る。対英武力闘争の悲惨な体験を描いた“真夏の夜の狂気”などでアングロ・アイリッシュ文学の中心的存在だったオフェイロンの短篇集。

3 西遊記(9)
ピンチヒッターとして登場した中野美代子氏の訳も馴染みになった西遊記。全10巻中の第9巻。話はいよいよ佳境に入り,凶星を負った三蔵は和尚殺しの願を掛けた滅法国の国王からいかに逃れるか? 20年ほど前,教壇でみた中野先生は,全く色気のない声で妙に威勢良く色気たっぷりな金瓶梅など中国小説の話をしていた。最近はいろいろメディアに登場し,相変わらずの貫禄を見せているようです....

4 確率の哲学的試論
18世紀の数学者ラプラスの哲学的な確率論。宝くじなど賞金の期待値は? 保険の掛け率は?身近な確率の問題を,数式なしで明快に説く。「化学の学校」(岩波文庫)を読んで,高校の化学の教科書がこれほど明快で楽しいものだったら,さぞかし化学好きの学生が増えるだろうと思った。総じて古典的な科学書は,読み物としても楽しめるものが多い。難しいことほど平易に書け,と言うが,既存の理論をこねくり回す現代の科学書に,読む楽しみはあるか?
posted by 南野靖一郎 at 16:58| 1997年

1997年11月17日

バルザックの大河小説


バルザックの小説は読まれなくなった。それは,本題にはいる前の能書きが長かったり,情景描写,舞台設定が細かすぎ,現代小説の話のテンポに慣れている読者には,それらを読まされる時間が耐えきれないからだという。また,いわゆる若い読書人たちの中には,名も知らぬマイナーな作品を尊び,「世界文学全集」的な作品を敬遠するのがよい,という気分もあるようだ。それで,いまどきバルザックの代表作「ゴリオ爺さん」なぞを読むのは,よほどの暇人ではないか?と思われるかもしれないが,我慢比べとなるかどうか,とりあえず読んでみることにしよう。

「ゴリオ爺さん」は500ページほどの物語である。ページを順に追っていくと,最初に舞台となる下宿屋とその住人の説明があり,主人公ゴリオの最初のせりふ「あれはわしの娘ですがね」が出てくるまでに50ページが経過。もう一人の主人公ラスティニヤックはそのすぐあとに登場するが,この第一章はそのまま170ページまで続き,やっと「パリ悲劇の序幕はこれをもって終わりとする」。この最初の50ページはまったく淡々とした書きっぷりで,あまりに細かい描写が出てくるから,かえって「舞台」の全体像が見えてこない感がある。しかし,バルザック自身,「観察と地方色に満ちあふれたこの小説の独特な味わいはパリっ子にしかわかってもらえないだろう」と言っている通り,当時の読者であるパリの人々には,これでさぞかしリアルなイメージを与えることができたのだろう。そして,これが退屈でないとは言い切れないが,ジョルジュ・サンドが「バルザックの作品は....どの1ページにせよ,書き落とすことがあったら,全体は不完全なものとなろう」と語った通り,ここを読み飛ばしては,あとあと面白くない。実際,バルザックは長大であるが,少なくとも冗長ではない。

ご承知の通り,バルザックは「人間喜劇」と題する作品集91篇を書いている。そのいわば巨大な大河小説の中で,最高の作品のひとつが「ゴリオ爺さん」であることは間違いない。異なる作品に同じ人間を何度も登場させるという手法も,この作品から始まった。よって,バルザックの他の作品を読むことで,ゴリオに登場した貧乏学生ラスティニヤックが,その後どのようにして驚異の出世を遂げたのか,不死身の男ヴォートランがいかに脱獄に成功し,パリ警察で活躍することになるのか,を知ることができる。

その膨大な作品の中で文庫本で出ているものは少ないし,岩波でも大方絶版である。バルザックに魅せられると,あとが大変だ。もっとも貴方が,「バルザックばかり読んでいられないから....」とゴリオだけで卒業してしまっても大丈夫。岩波文庫版の訳注は親切で,その辺の事情をうまくまとめている。

バルザックの経歴はモームの「世界の十大小説」(岩波文庫)に詳しい。写真はパリ市内のバルザックの像と,ペール・ラシューズ墓地にあるバルザックの墓。
posted by 南野靖一郎 at 15:56| 1997年

1997年11月07日

旧掲示板1

文庫本大好き−掲示板No.1




富田 靖 - 97/11/07 04:34:39

ホームページアドレス:http://www.ascii.co.jp/service/pcretro/vol.2/index.html


コメント:

ハナさん,ホームページ拝見。高校生でもホームページを作っている人がときどきいますね。どんな環境(マシンとか)でやっているのか,
HPで紹介されてはいかが。私の高校時代,まだパソコンはありませんでした。最初に買ったパソコン,じゃなくてマイコン
(と当時は言いました)は8ビットでメモリが48k(Mじゃないよ)でしたね^^;;。「パソコンの歴史」のページに載ってます。






富田 靖 - 97/11/07 04:23:37


コメント:

渡部篤さん,こんにちは。ヨーロッパで澁澤龍彦とは風流ですね....とホームページを拝見したら,ビックリ!
みなさんも見に行きましょう^^。






富田 靖 - 97/11/07 04:11:19

おすすめの本: イヴの日記


コメント:

マーク・トウェインだったら,「イヴの日記」もいいですよ(岩波文庫)。エデンの園でイヴとアダムが日記をつけていて,
そこで神様をこきおろすという変な本ですが....。






NACA -
97/11/07 00:12:27

電子メールアドレス:echitei@ma3.justnet.ne.jp

おすすめの本: 人間とは何か


コメント:

あの、こんにちは。前回は、「高慢と偏見」をオススメにしましたけど「退屈だ」という声がちらほら聞こえた
(読み込めばおもしろいと思うのですが・・・)ので、今回はマーク・トウェインさんの本を紹介します。トウェインといえば、おなじみの
「トムソーヤの冒険」だとか、その続編とかいわれている「ハックルベリー・フィンの冒険」とかで有名ですね。その他にも、取りかえばや物語
「王子と乞食」なんてのもありますね。もしかしたら、子供の頃に読んだ方も結構いるんではないでしょうか。
オースティンのようなお上品な小説が苦手という人にはトウェインはオススメです。わたくしも、トウェインのような、
野蛮な感じの小説の方がどちらかといえば好きです。今回オススメの本「人間とは何か」(岩波文庫)は、彼の晩年期の作品です。
彼の晩年期の作品には「不思議な少年NO.44」という未完の作品もありますけど、ふたつともペシミズムよろしくルンバで書かれています。
人間はすなわち機械。外的諸条件でくみ交わされ、つき動かされる機関にすぎず、なんの自由意志も創造もありえない。
その行動原理は終始一貫して自己慰安のみ。理念も義務もあったものではない・・という主題を、種々の具体例でしつこく展開するのが、
老人と青年の対話体評論「人間とは何か」です。「不思議な少年」にいたっては、人間とは塵埃に目鼻つけたもの。
その栄達も悲惨も虫けら同然のはかなさで、生涯はドミノ倒しのように運命づけられ・・・といった罵倒的な人間批評を試みています。
なぜトウェインがペシミストなのかはいろいろと専門書がありますからそちらにあたってもらうとして、「人間とは何か」の老人は、
人生に幻滅どころか、自己主張に達者な元気者で、この世にはびこる幻想をひきはがすための誇張や単純化は朝飯前。「世論てやつは、
しばしば人間をしてどんなことだってやらせる」とか「思想を口にするやつはいるけど、みんなようするにセコハンで言ってるにきまってる」
とか。胸がすくとまでは言いませんが、ニヤリとするくらいのセリフはざらにあって、楽しめます。未熟な青年がボケ、
老人がツッコミのディスカッションドラマを一度、目を通して御覧あれ!






渡部篤 -
97/11/06 22:16:31

ホームページアドレス:http://www.akina.ne.jp/~atushi/

電子メールアドレス:atushi@akina.ne.jp

おすすめの本: ヨーロッパの乳房


コメント:

現在、渋澤龍彦の本に狂っています。先日ヨーロッパにも5冊くらい持っていきました。面白いですね。






村上フリーク、ハナ -
97/11/06 20:31:24

ホームページアドレス:http://www.geocities.co.jp/Hollywood/6902

電子メールアドレス:HZK00117@niftyserve.or.jp


コメント:

どうも。富田さん、最近のおすすめは「アンダーグラウンド」です。僕は感動しました。ノンフィクションですけど。
ちなみに僕のページが完璧に開通できました。よろしければそちらもどうぞ。






富田 靖 -
97/11/06 10:18:48


コメント:

緒瀬ロウさん,こんにちは。さっそくHPを拝見しました。小説などで心に残る(自分にとっての)名言というのは沢山ありそうですが,いざ
「これ」というのがなかなか思い出せません^^;;。みんなの知らないかっこいい文句を書き込みたいのですが....。






富田 靖 -
97/11/06 10:13:48


コメント:

NACAさん,こんにちは。 高慢と偏見は(タイトルが)地味ですが,楽しい本ですね。モームの「世界の十大小説」にも選ばれています。
★風邪ひいて調子が悪いので,バルザックを読んで療養中?です。






緒瀬ロウ -
97/11/06 06:11:11

ホームページアドレス:http://www.sm.rim.or.jp/~spike/

電子メールアドレス:spike@sm.rim.or.jp


コメント:

先日、ホームページを開設しました。 その中で、本(や映画)のなかで心に残った言葉というのを集めています。 ”
この世界はあらゆる示唆に満ちている”というコーナー名です。 なにかありましたら、メールにて頂けると嬉しいです。
翻訳ものでおもしろい小説も探してます♪






NACA -
97/11/06 06:09:47

電子メールアドレス:echitei@ma3.justnet.ne.jp


コメント:

「蟹工船」という言葉を観て、書き込みをしてみようという気になりました。 そうですかあ。 カニ光線ですかあ。 以前、大学の
「アメリカ文学」っていう授業で読まされた覚えがある。 「文学部にいるんだから、小林多喜二ぐらい読まなきゃダメです」
というようなこと先生に言われて・・・。 プロレタリア文学の代表作といわれるくらいのものは読まなきゃ、 あきまへん。ってなかんじで・・
・。 徳永直の「太陽のない街」とか。 一応、読んだには読んだけど、楽しいものではなかったなあ。 最近、ジェーン・オースティンの
「高慢と偏見」にはまっている。 オースティンていう作家の名前くらいは知っていたけど、 読んだことなかったんだなあ。 やあ、
面白いです。 なんで、今まで読まなかったのだろう、と思ってしまった。 岩波文庫から、上下巻あります。
読んだことないひとは読んでみるべし。 わたくし、楽しさあまって、三日で2回読み込みました。
オースティンの他の作品も読んでみようと思っていますが、 現在、トマス・ピンチョンて人の「競売ナンバー49の叫び」
というのを掛け持ちして、いろいろなの読んでいるため、 それが終わったら、読もうかなあ、なんて思っています。
ピンチョンの作品に出てくるレメディオス・バロって画家の 作品をみてみたいなあ、どこかで観れないかなあ。






富田 靖 -
97/11/06 04:48:02


コメント:

村上フリーク・ハナさん,こんにちは。 僕も好きです,村上春樹。でも最近読んでいない....。ノルウェー・・・や羊・・・
は読んでいるんですが。最近の作品でおすすめはありますか?






富田 靖 -
97/11/06 04:43:55


コメント:

Big Bridgeさん,こんにちは。 僕も入学記念?に生協で,分厚いラッセルの「西洋哲学史」を買ってしまった^^;;。でも,
これはよい本でありましたね。






村上フリーク・ハナ -
97/11/05 21:56:51

ホームページアドレス:http://www.geocities.co.jp./Hollywood/6902

電子メールアドレス:HZK00117@niftyserve.or.jp

おすすめの本: 風の歌を聴け


コメント:

 こんにちは。高校生にして、村上フリークのハナです。別に高校生だからってどうってことはないんですけどね。風の歌を聴けはいいっすよ。
最高です。暇があったらまた書き込みますので、それではまた。






Big Bridge -
97/11/05 16:16:28


コメント:

本はマンガや雑誌で十分だ、と高校生の頃まで思っていて、大学生協で質の高い文庫本なりなんなりに接してみると、
新たな地平が見えてきた去年の俺。






松野 - 97/11/04
17:40:26


コメント:

誰か、「海が聞こえる」について語りませんか?文学といっても僕はあんまり詳しくないので、よろしくお願いします。






藤井奨 -
97/11/04 17:38:55

電子メールアドレス:fji-ssmu@net135.or.jp


コメント:

集英社文庫 伴野朗の大航海を探しています適価でお願いします






佐藤研 -
97/11/04 17:37:54


コメント:

私は本屋でバイトをしている者です。ある日、一人のお客様が「文庫本で『かにこうせん』ありますか?」と聞かれたので、
私は探しに行きました。『かにこうせん』と聞いた私はふと『プロレタリア』と言う言葉をどこかで聞いたのを思い出しました。
どんな話何だろう?私は想像しました。そのときの私の想像は、 「プロレタリア星団からやってきた、
蟹の姿をしたエイリアンが地球に攻めてきた!!奴等は驚異の殺人レーザーで人類を恐怖に!人類の存亡を賭け、
人類最後の希望 佐藤研 22歳 独身 は奴等の殺人レーザー『カニ光線』を打ち破ることが出来るのか!!」 という本でした。私は、
火の鳥文庫(角川)を探していました。もちろん見つかりませんでした。初めて聞いたら「かにこうせん」って言ったら「カニ光線」だよね?
しかも、そんな内容だったら絶対 角川文庫だと思ったんじゃぁ!!しかも、奴等は「プロレタリア星団」から来たんじゃー!!
プロレタリア星団ってありそうだし・・・そんだけです。






富田 靖 -
97/11/04 17:36:58

ホームページアドレス:http://kikuanni.me.noda.sut.ac.jp/~kh/book/umiga.j.html


コメント:

海が聞こえる,の詳しい情報が下記のページにあります。 たぶんこれですよね?






フランス文学少年 -
97/11/04 17:35:02

電子メールアドレス:davinchi@knight.avexnet.or.jp


コメント:

オオ。未来のイヴが復刊ですかあ?それは買おうっと。それと、創元社なんとかってところで、1500円で売られているのを見ました。
文庫サイズなのに、1500円は、高い!とおもって、買わなかったけど。文庫サイズなのに、1000円するやつってムカツきません?
講談社文芸文庫なんてやつは、本好きをバカにしてるとしか思われない。いいやつそろってるけど、高いよなあ。






富田 靖 -
97/11/04 17:33:58


コメント:

「未来のイブ」は楽しみですね。11月の復刊情報は,もう出ていましたか? そろそろ岩波文庫も再復刊?の時期に入っているのでしょうか。
戦後一度も復刊していないタイトルも多いのですが....。 ☆ついでに...."文庫本のリンク"集は随時更新しています。






冴木正隆 -
97/11/04 17:33:20

電子メールアドレス:maririn@white.plala.or.jp


コメント:

御無沙汰しています。北海道から先週戻ったばかりです。リラダンファンがいて大変嬉しいです。『未来のイブ』は11月に復刊が決まりました。
上下2巻で1300円です。私も実は13年前に上巻しか買えなかった(下巻は既に品切れだったんです)ので、13年前の敵を討てそうです。
それから、『残酷物語』は筑摩書房の筑摩叢書で出ているはずです。品切れかも知れませんが、
古本屋で1000円〜1500円ぐらいで探せるはずです。10月に出たフローベル『聖アントワヌの誘惑』もお薦めの1冊です。以上、
ご報告まで。






富田 靖 -
97/11/04 17:32:18


コメント:

岩波文庫の会から出ていた雑誌「文庫」の総目次を作成中です。 ほとんど自分の資料として作っているのですが,最近出た「文庫」
復刻版をお持ちの方にも役立てていただきたいと思っています。 ※何分,分量が多いので,順次掲載する予定です。






富田 靖 -
97/11/04 17:31:42


コメント:

こんにちは! リラダンは確かに絶版になっていますね。古書店では「未来のイブ」は2冊で3000円,「残酷物語」は
2000円ほどで売られているようですね。岩波文庫では,4年ほど前に,そのものずばり,ブルトンの「シュルレアリスム宣言」がでています。






フランス文学少年 -
97/11/04 17:30:35

電子メールアドレス:davinchi@knight.avexnet.or.jp


コメント:

はじめまして。ぼくは17歳のおとこです。フランス文学に憑かれました。澁澤龍彦の影響で。下のほうを見ましたけど、「未来のイヴ」
ってリラダンのですか?ぼくも欲しいのですが、ハードカバーでしか手に入らないじゃないですか。あと、「残酷物語」とかも、手に入らない。
全集でしか。もう、やになります。どんどん絶版になりやがって。あ、それと、誰かシュルレアリストのカリントンという女性作家(詩人)
について知ってませんか?単行本があれば、ぜひぜひ欲しいのですが・・・・。あと、シュルレアリスム系の作家(ブルトンなど)の文庫で、
いらないやつ(或いは古本屋で手に入れるのでもかまいません)があれば、譲ってください。おねがいします。以上です。






富田 靖 -
97/11/04 17:29:22


コメント:

おおたけさん。こんにちは! え〜,沖縄から戻りましたら,部屋の中が模様替えしてあったので,「なんで?」とカミサンに聞くと
「子供が文庫に噛みついてパラフィンをバリバリ破くので,隠しちゃった」とのこと^^;;。 本は大部分,実家の書庫(納戸ともいう)
に並べてあるのですが,最近のものや,資料として使うものだけ,こちらに置いてあるのです。 70年も生き延びてきた「文庫本」が,
一瞬にボロボロとは...戦争や地震より恐ろしい奴だ....。






おおたけ -
97/11/04 17:28:43

電子メールアドレス:otake@aizawa.phys.waseda.ac.jp


コメント:

いつも面白い情報をありがとうございます。岩波書店ホームページと共に使わせて貰っています。また、コラムなど楽しく読んでいます。
わたしは最近になって岩波文庫の面白さに気付きました。これから、出来るだけ多くを読んでいきたいと考えています。
これからも楽しい紙面造りを期待します。






富田 靖 -
97/11/04 17:27:42


コメント:

恒例の"神田古本まつり"10月24日から29日まで,神田古書店街を中心に開催されます。詳細は「BOOK TOWN 神田」
のホームページか,雑誌AMUSE(毎日グラフ・アミューズ)の最新号をご覧下さい。東京の特徴ある古書店をたくさん紹介しています。






富田 靖 -
97/11/04 17:27:01


コメント:

冴木さんにちは。朝一番で沖縄から帰ってきました(なにも観光できませんでしたが)^^;;。岩波文庫は古典の宝庫などと言われていますが,
その古典も今となっては,面白本・奇怪本?となってしまった感じですね。
ガルガンチュワは解説も含めてホントに面白い無茶苦茶な本だと思います。カミサンの最近のおすすめ本はコリンズの「白衣の女」だそうです。
ポピュラーすぎるかな?






冴木正隆 -
97/11/04 17:26:01

電子メールアドレス:maririn@white.plala.or.jp


コメント:

はじめまして。文庫が好きでいろいろ集めては乱読しています。このホームページにも改訂される前から何回か訪れていました。
先日読売新聞の日曜版で紹介されていて、嬉しかったです。私の岩波文庫遍歴も結構長いです。1984年に『未来のイヴ』
が復刊された時にカーライル『衣服哲学』やハヴロック・エリス『夢の世界』を一緒に購って、岩波文庫の面白さに気づき、それ以来、
復刊の度に面白そうな本を買い求めてきました。私のお薦め本ベスト3は、『西洋道中膝栗毛』、『抱朴子』、『ガルガンチュワ・
パンタグリュエル物語』です。品切書目を除けば、『金枝篇』、『ビーグル号航海記』、『御伽草紙』あたりですね。
できれば他の方たちのお薦め本も知りたいです。






富田 靖 -
97/11/04 17:11:52


コメント:

asahi-netが専用アクセスポイント以外からの uploadが出来ないので,こちらに移ってきました。
asahi-netは12月まで使用できるので,その間,こちらへ誘導する看板を出しておきます。
以前の"掲示板"にお書きいただいた内容はこちらへ移行したいと思います。






富田 靖 -
97/11/02 06:11:37

ホームページアドレス:http://www.geocities.co.jp/Hollywood/1268/

電子メールアドレス:y-tomita@saturn.netspace.or.jp

おすすめの本: 岩波文庫


コメント:

ゲストブックをつくりました。 本に関することなら,なんでもお書きください。

posted by 南野靖一郎 at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 1997年

1997年10月28日

"アメリカの悲劇"ドライサーの「シスター・キャリー」

  アメリカ中西部の田舎からシカゴへやって来たキャリーは,華やかな都会生活の魅力にとりつかれたあげく,
妻子ある酒場の支配人とニューヨークへ駆落ちする。そこで,キャリーは女優として売出し成功するが,
男は没落し労働争議に巻込まれてゆく…。都市小説の先駆となったドライサー(1871-1945)の代表作。写真は作者。
読んでからこの写真を見ると,ちょっとイメージが違いました。もっと退廃的な感じの人かと思ったのですが....。


「シスターキャリー」の評価


「シスター・キャリー」は現在ではアメリカ文学の中で最も重要な作品と考えられています。しかし,
1900年の発表当時は450部しか売れず,ほとんど黙殺され,ついでその「新時代の女性像」をめぐって激しい論争の的となり,
1970年代になってようやく20世紀アメリカ小説の記念碑的な作品,最高のリアリズム小説と賞賛されるようになりました。
日本でも,"アメリカの悲劇"は古くから読まれていたものの,「キャリー」の訳本は入手困難でした。今回,
ようやく岩波文庫版で読めるようになったのです。


キャリーをめぐる男たち


少女キャリーは,貧しさから抜け出すために大都会シカゴにやってきますが,その都会の威力に圧倒され,打ちひしがれてしまいます。
そこを助けるのが羽振りのいいセールスマン,ドルーエ。キャリーは都会の華やかな生活を味あわせてくれるドルーエに惚れ,
一緒に暮らすようになります。


しかし,そのドルーエもしばらくするとつまらない男に見えてきて,もっと金持ちの支配人,ハーストウッドに乗り換えます。しかし,
ハーストウッドはこの浮気がばれて,彼の財産を押さえ込んでいる妻と訴訟となり,ついに強引にキャリーを連れてカナダへの逃避行。
おまけに自分の店の売上金をたんまり盗んでいき,お尋ね者に。


ふたりは世間から身を隠すようにしてニューヨークに現れますが,そもそも金の切れ目が縁の切れ目か,事業に失敗し,
しょぼくれてしまったハーストウッドから,心は離れる一方。生活も困窮の一途。そんなとき,
かつてちょっと素人芝居で評判をとったことを思いだし,ブロードウェーの端役として潜り込んだキャリーは,
トントン拍子にスターへの道をまっしぐら。


当然,もうハーストウッドのことなどはお構いなしで,すべてを失った彼は,労働争議まっただ中の鉄道会社に職を求めますが,
過酷な労働に打ちのめされます。かつてシカゴの洒落者で通っていたこの男の最期は,物乞い生活の末のガス自殺でした。


シスター・キャリー〈上〉 (岩波文庫)

キャリーの行方


この物語において,キャリーは理性よりも本能的に行動する女性ととらえられていて,ドライサーは多分にキャリーに同情的です。


「大都会が目の前にあらわれると,これまで思いもかけなかったような美しさをこの都会が差し出してくれると見て取り,本能的に,
感じたことだけを頼りにしてそれにしがみついた。すてきな身なりをして優雅な調度に取り囲まれている男たちは,満ち足りているように見えた。
・・・・求めていたのはあんなものそれ自体ではなくて,そういうものによってあらわされている意味なのだ。
時が経ってみるとはっきりしたとおり,あんな世界に何かの意味が隠れていると思ったのは間違いだった。」「だからわきまえるがいい。汝には,
満たされるということも,飽くということもない,ということを」


19世紀最後の年に書かれたこの物語。豊かな時代を目指して一直線に進みはじめたアメリカで,情熱のままに生きたキャリーが,
勝ち得た成功のあとの孤独感,閉塞感。100年が過ぎた今,我々が追い求めている「豊かな生活」は,キャリーのそれと,
どこが違うのでしょうか。そして我々はその生活に,どんな意味を見いだしたのでしょうか。「キャリー」が,現代において再評価されたわけは,
自ずと明らかなように思えます。


「キャリー」はなぜ「シスター」なのか?


これは物語を読み終わってもよくわかりません。しかし,次のような事実があります。


ドライサーは10人兄弟の下から2番目。兄弟はみんな不良でした。
兄たちは家出して芸人や流れ者になり,行方しれず。長姉は弁護士に誘惑され私生児を死産。
次姉はシカゴで酒場の出納係をしていた男に誘惑され,酒場の金を持ち逃げしたこの男とニューヨークに駆け落ちし,新聞を賑わしたりしました。
おかげでドライサーは兄弟の生活費まで稼がねばならず,一時はノイローゼで自殺しかけたこともあったようです。
シスター・キャリー」はこのの経験をもとに書かれています。

posted by 南野靖一郎 at 15:57| 1997年

1997年10月20日

1997年秋の復刊

1997年 秋の復刊

11月は岩波文庫恒例「1997年秋の復刊」が発売されました。本来であれば,その発刊の精神からして,これは岩波書店贖罪の日にならねばならぬハズですが,「待望の復刊」などと読者を有り難がらせるというのは怪しからんことです^^;;。そこで,いまさら買うものなど無いと言えれば格好いいのですが私には残念ながら買わねばならぬものがありました(クーッ!)。

哲学概論

ヴィンデルヴァントの著作は岩波文庫に何点か入っており昔は広く読まれたようなのですが,最近はみな絶版。この「哲学概論」も久々の復刊です。初版や改版の発行日はすぐわかりますが,復刊される書目が,いつ絶版になったのか?を調べるのは大変です。(正確には古い解説目録を順番に当たるしかないでしょう) ただ,大ざっぱにいって,「創刊70周年解説総目録」で 著者番号(青234-1とかいうヤツ)がついていない書目はここ20年以内には再版,復刊されていないと考えられます。以前は復刊書目に「戦後初の復刊」とかマークがついていたのにいつのまにか無くなってしまったので,珍しい書目かどうかはこれであたりをつけるしかないようです。

というような能書きを書いてきたのは,まだ本書を読んでいないからなんですが^^;;。

安愚楽鍋

なんか居酒屋のチラシみたいなタイトルは,相変わらず人を食った戯作者・仮名垣魯文の鍋小説。鍋料理が庶民の暮らしの中に入ってきたのは明治2年に江戸市中に牛鍋屋が相次いで開店してから。新しもの好きなら誰にも負けない魯文のこと。さっそくこの流行の風俗を小説に仕立て上げたのが本書。魯文は「士農工商,老若男女,賢愚,貧福おしなべて,牛鍋食わねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」と,鼻持ちならぬグルメ評論家ぶり。まあ,牛鍋こそが,明治初期の庶民にとって一番身近な文明開化であったかもしれません。

☆ ☆ ☆ ☆

これだけでは何なので,ほかに注目の書をあげてみましょう。
ここのところ"再復刊"ばかりで面白みが無かったけれど,今回はなかなか渋い選択なので,注文はお早めに!

未来のイヴ

「掲示板」でも話題となった注目の奇書。解説目録の「人間性に対する深き洞察と峻厳なる批判とその芸術境から生れ出る豪華典麗な夢想とが,渾然として融合し,
絢爛たる唐草模様の絵巻物となったのがこの作」ってのは,まったく紹介になってないんじゃないか?

天草本 伊曽保物語

切支丹本まで入れてしまうところが岩波文庫ですが,ほかにも「どちりな・きりしたん」などが出ていて,キリスト教伝来直後の我が国での布教の様子がうかがえるほか,当時の"日本語"を知るための文献として重要。

妻への手紙

ロシアの借金王ドストエフスキーの妻への「清らかな」手紙。モームの「十大小説」ドストエフスキーの部を読んでからこれを読むと,深い味わい^^;;あり。

ブヴァールとペキュシェ

「ボヴァリー夫人」や「感情教育」の不倫王フローベールによるブルジョワ社会批判の書。自己批判はどうした?

こんなとこかな....
posted by 南野靖一郎 at 16:56| 1997年

1997年秋の復刊

1997年 秋の復刊

11月は岩波文庫恒例「1997年秋の復刊」が発売されました。本来であれば,その発刊の精神からして,これは岩波書店贖罪の日にならねばならぬハズですが,「待望の復刊」などと読者を有り難がらせるというのは怪しからんことです^^;;。そこで,いまさら買うものなど無いと言えれば格好いいのですが私には残念ながら買わねばならぬものがありました(クーッ!)。

哲学概論

ヴィンデルヴァントの著作は岩波文庫に何点か入っており昔は広く読まれたようなのですが,最近はみな絶版。この「哲学概論」も久々の復刊です。初版や改版の発行日はすぐわかりますが,復刊される書目が,いつ絶版になったのか?を調べるのは大変です。(正確には古い解説目録を順番に当たるしかないでしょう) ただ,大ざっぱにいって,「創刊70周年解説総目録」で 著者番号(青234-1とかいうヤツ)がついていない書目はここ20年以内には再版,復刊されていないと考えられます。以前は復刊書目に「戦後初の復刊」とかマークがついていたのにいつのまにか無くなってしまったので,珍しい書目かどうかはこれであたりをつけるしかないようです。

というような能書きを書いてきたのは,まだ本書を読んでいないからなんですが^^;;。

安愚楽鍋

なんか居酒屋のチラシみたいなタイトルは,相変わらず人を食った戯作者・仮名垣魯文の鍋小説。鍋料理が庶民の暮らしの中に入ってきたのは明治2年に江戸市中に牛鍋屋が相次いで開店してから。新しもの好きなら誰にも負けない魯文のこと。さっそくこの流行の風俗を小説に仕立て上げたのが本書。魯文は「士農工商,老若男女,賢愚,貧福おしなべて,牛鍋食わねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」と,鼻持ちならぬグルメ評論家ぶり。まあ,牛鍋こそが,明治初期の庶民にとって一番身近な文明開化であったかもしれません。

☆ ☆ ☆ ☆

これだけでは何なので,ほかに注目の書をあげてみましょう。
ここのところ"再復刊"ばかりで面白みが無かったけれど,今回はなかなか渋い選択なので,注文はお早めに!

未来のイヴ

「掲示板」でも話題となった注目の奇書。解説目録の「人間性に対する深き洞察と峻厳なる批判とその芸術境から生れ出る豪華典麗な夢想とが,渾然として融合し,
絢爛たる唐草模様の絵巻物となったのがこの作」ってのは,まったく紹介になってないんじゃないか?

天草本 伊曽保物語

切支丹本まで入れてしまうところが岩波文庫ですが,ほかにも「どちりな・きりしたん」などが出ていて,キリスト教伝来直後の我が国での布教の様子がうかがえるほか,当時の"日本語"を知るための文献として重要。

妻への手紙

ロシアの借金王ドストエフスキーの妻への「清らかな」手紙。モームの「十大小説」ドストエフスキーの部を読んでからこれを読むと,深い味わい^^;;あり。

ブヴァールとペキュシェ

「ボヴァリー夫人」や「感情教育」の不倫王フローベールによるブルジョワ社会批判の書。自己批判はどうした?

こんなとこかな....
posted by 南野靖一郎 at 16:56| 1997年

1997年10月09日

読売新聞日曜版インターネットばんざい


先日,職場に取材に来ていたのですが,9/28と10/5の読売新聞日曜版にこのページ「文庫本大好き」が紹介されました。こんなマイナーなところを,よく探してきたなと思いますが,記者の人が趣味の人だったようで,ずいぶん丁寧に書いていただきました。
posted by 南野靖一郎 at 15:52| 1997年

読売新聞日曜版インターネットばんざい


先日,職場に取材に来ていたのですが,9/28と10/5の読売新聞日曜版にこのページ「文庫本大好き」が紹介されました。こんなマイナーなところを,よく探してきたなと思いますが,記者の人が趣味の人だったようで,ずいぶん丁寧に書いていただきました。
posted by 南野靖一郎 at 15:52| 1997年

1997年09月24日

解放された世界−H.G.ウェルズの予言書

解放された世界 (岩波文庫)
H.G.ウェルズ
岩波書店
売り上げランキング: 150165

第一次世界大戦前夜,1913年に執筆,14年に刊行されたH.G.ウェルズの「解放された世界」は,のちの第2次世界大戦における原子爆弾の惨害を「予言」したものとして,しばしば引用されます。

オットー・ハーンによるアイソトープの観測と核分裂の発見は1938年ですから,執筆当時はまだ原子爆弾はもちろん,ラザフォード-ボーアの原子モデルですら存在していませんでした。本書は,世界戦争における原子爆弾の使用を1950年代とし,それがパリやロンドンなど世界各国の大都市に投下された結果,各国の都市機能,政治機能が完全に麻痺し,旧来の「国家」が崩壊,世界共和国が実現するまでの物語で,そのあたりの「歴史的」事情については,本書の序説やウェルズ自身による序文に詳しく述べられています。

巻末には,訳者による「ウェルズと日本国憲法」と題する「解説」がついており,「解放された世界」で示された強力な国際連盟案は,ウェルズの「人権宣言」に関するルーズベルト大統領への書簡となり,それがポツダム宣言,ひいては日本国憲法の成立に直接の影響を与えたこと。戦後の我が国における個人の自由と平等と権利,平和と進歩と繁栄はなんといっても現行憲法,つまりウェルズの人権平和憲法のおかげであること,などが書かれています。

訳者が発掘したという,ルーズベルト大統領とウェルズとの往復書簡がどれほどの大発見であるかはわかりませんが,ウェルズの世界共和国構想がどのようなものであったのかを知ることができます。訳文がすっきりしていないのが難ですが,ウェルズの理想国家像を知る上で興味ある作品といえるでしょう。

ウェルズは原子爆弾が欧州の大都市ではなく,極東の2都市に落とされたことを知ってすぐ,1946年に亡くなりました。原子爆弾は国家に対しウェルズの予測に近い深刻な打撃を与えましたが,科学知識の発達により独立主権国家,独立帝国はもはや存在不可能であるというもう一つの予測には,まだ回答が与えられていません。
posted by 南野靖一郎 at 16:02| 1997年

1997年09月23日

つゆのあとさき(永井荷風)

つゆのあとさき (岩波文庫 緑 41-4)
永井 荷風
岩波書店
売り上げランキング: 112385

「つゆのあとさき」について荷風は,「教師をやめると気楽になって,遠慮気兼をする事がなくなったので,おのずから花柳小説のようなものを書きはじめた。カフェの女給は大正十年前後からにわかに勃興して一世を風靡し....しかし震災後早くも十年を過ぎた今日では盛りを越したようである。これがつゆのあとさきの出来た所以である」と述べています。

また,老境を語って,「巴里には生きながらの老作家をまつり込むアカデミがある....大正文学の遺老を捨てる山は何処に在るか….わたくしは「生活の落伍者」または「敗残の東京人」である。さればいかなる場合にも有島,芥川の二氏の如く決然自殺をするような情熱家ではあるまい。数年来わたくしは宿阿に苦しめられて筆硯を廃することもたびたびである。そして疾病と老耄とは却て人生の苦を救う方便だと思っている。自殺の勇断なき者を救う道は此の二者より外はない。老と病とは人生に倦みつかれた卑怯者を徐々に死の門に至らしめる平坦な道であろう。天然自然の理法は頗妙である」と。なかなか荷風らしい言葉ではありませんか。(正宗谷崎両氏の批評に答ふ:昭和7年より)

「つゆのあとさき」は昭和6年,荷風53歳の作品。谷崎潤一郎が「女給ものの集大成」と激賞し,日本風俗小説の頂点をなすものと目されていますが,「断腸亭日乗」を読むと,この時期荷風は連日カフェに通い詰め、実地取材に励んでいたことがわかります。発表当時はかなりの伏せ字があり、たとえば,「君江はかういふ場合初めて逢った×に対しては,度々馴染を重ねた×に対するよりも却て一倍の興味を覚え,思ふさま××悩殺して見なければ,気がすまなくなる。いつからこういう癖がついたのかと,君には××××××ている最中にも....」という具合。あとの××××××は「男に口説かれ」であると知れば馬鹿馬鹿しくなってきますが,この時代,この手の作品を発表することは,なかなか難しいことだったのでしょう。

また本書「つゆのあとさき」は,まず題名に味がありますが,荷風自身もこれには苦心したようで,「5月17日,晴,椎の落葉を掃う。今春2月頃より起草の小説漸く完結に近し。然れども未題名を得ざるなり」と述べ,漸く26日になって,「小説夏の草を改めてつゆのあとさきとなし草稿の浄写を笄阜氏に話す」と記しています。
posted by 南野靖一郎 at 16:03| 1997年

1997年09月20日

Book Review

1 マクベス(シェイクスピア)
改版。----マクベス早わかり----17世紀スコットランドの勇敢な武将マクベスは, 魔女の暗示にかかり王ダンカンを殺し,悪夢の世界へ引きずり込まれてゆく。シェイクスピア最盛期の作品。 シェイクスピアの四大悲劇とは,これと「ハムレット」「オセロ」「リヤ王」。「ロミオとジュリエット」は違うよ。
2 ゴリオ爺さん(バルザック)
改版。----ゴリオ爺さん早わかり----夢をいだいて王政復古時代のパリに出てきたラスティニャックは, 社交界に出入りし,立身出世をはかる。一方,二人の娘を上流階級に嫁がせたゴリオは, 娘たちに裏切られて貧窮のうちに死去し,ラスティニャック青年は,ゴリオの死を通じてパリの残酷な現実を発見する。 どうもこの作品,昔から「ゴリオ爺さん」という題名で損をしているような気が^^;;。波瀾万丈の物語なのに, のんびりした印象があるから....。
3 近世風俗志(2)(宇田川守貞)
江戸時代の髪型,入れ墨,櫛,お歯黒,男の服装(袴,浴衣など)について図解する江戸時代風俗百科。ポイントは, 江戸,京都,大阪の風俗を比較しているところ。江戸時代版三都物語。
4 幕末明治 女百話(下)(篠田鉱造)
これ,紀田順一郎氏が解説を書いているんですね。 インターネットで探してもミステリー作家としてしか氏の名前は出てきませんが,かつて「黄金時代の読書術」 など多くの若い読書家予備軍におくる啓蒙書に勇気づけられた私としては,もっと「読書論」や「書誌」 で仕事をしていただきたいと思うこのごろ。映画フィルムコレクターでもあり,早くから執筆にパソコンを導入していました。
posted by 南野靖一郎 at 17:00| 1997年